2015/10/16

③音楽を取り巻く物理的変化その2

 最後に買ったプレイ用の7インチはJunkanoo Riddimだったかな。既にレコードは使わないけどこれはきっと最後のグローバルヒットだろうから記念に買っておこうみたいな感じでした。実際には2004年以前から新譜のレコードプレイは全くしなくなってたと思うから、業界内では相当早い段階でレコードからCDに切り替えた方だったかと。
 その頃からCDJというツールがクラブプレイに耐えうる機械になり、ほとんどのクラブに常設されるようになっていったということもあいまって、特にダンスホールレゲエのプレイヤーにおいてはデジタルデータをCDに焼いたものを再生するという形態が益々加速し一般的になっていきました。
 あと、他のジャンルに先行して脱アナログ化が進んだ原因にはダブプレートという特有のシステムの影響がかなりあるかな。説明するまでも無いけど、ダブはアーティストに歌ってもらった自分専用曲、スペシャルとも呼ばれるもの。レゲエの世界では特にこれの良し悪しや所有数が評価に直結するためレコード以上の主要なプレイ音源でした。CDJが出てくるまでは、アセテート盤というレコードの前段階にサンプルで作るような簡易レコード(といってもとても重たいレコード盤)に自分専用曲を入れて所謂ダブプレートとしてかけていました。2000年初頭ぐらいには日本にもいくつかプレートを作ってくれる業者さんもあったりしたけど、当時はほとんどみんなジャマイカまで行って向こうで歌を歌ってもらってそれを何十ドルもかけてアセテート盤というレコードにしてかけるというとんでもない手間とコストをかけてプレイヤーたる地位を獲得していったのです。レゲエサウンドの人達は、通常のレコードだけでなく、ダブプレートを作り、更にはスピーカーまで作らなければ一流と認められなかったから、1000万ぐらいは余裕でかかる仕組み。
 自分達が始めた頃憧れた先輩達はみんなそれをしっかりやってたし同世代もみんなそのセオリー通りの世界で勝負してってた。人生のかけかたが半端じゃないんですよ。だから、未だにレゲエサウンドがブラックミュージック界隈で独特のリスペクトのされ方をするんだと思います。自分も、子供の頃から貯めてたお小遣いと、社会人になってからは普通にサラリーマンとして働いて、ボーナスの全てと給料のほとんどをダブに費やしました。森ビルがどうの(メンバーが関連会社に勤めてるだけだし)とかいわれの無い誹謗中傷?で散々嫌な目にあったけど、それに関しては未だに恨んでるw。まあ、今でも、勤めている会社名を知っていても年収何千万らしいとか、そんなクソみたいな社会常識を逸脱した話がまかり通っちゃうのも酷い世界だなってことの表れでそこも問題なんだけどね。当時はネット上での噂話とかでそういうのが特に多かった。流行に流行ったダンスホールレゲエが完全なるDQNミュージックになってしまった時代なのでしょうがないですね。当時は二足の草鞋はNGって風潮があったからそれを払拭したくてサラリーマンを前面に押し出したらバビロンとか言われたり。。。

って話がそれ過ぎるからそれはそれで今度書こう。

 話を戻すと、ダブプレートを作らずにCDでかけられることで重さもコストもものすごく軽減できるため、ダンスホールレゲエ業界界隈ではデジタルデータの流通とCDJの利用が急速に広まっていきました。リミックスもその日用で作ったものをその場でかけられるというのがそれはもう劇的な進歩。ダブが最重要だったレゲエサウンドにとって、重いダブプレートの持ち運びから解放されるための脱アナログ化は至極当然の流れでした。

 モノマネポーザーは10年前はブラックチャイニー、今はメイジャーレイザーのフォローとそういう意味では全くブレずにネタ元を一貫して真似してるわけですが、当時はブラックチャイニーなどのマイアミレゲエを真似てユーロビート×ダンスホールのリミックスとかを一生懸命作っており、CDJより更に見た目にもハイテク感というかレゲエ特有のいなたさを払拭しいとか思っていたため、その後すぐIndigoDJとかいう変なサウンドカードを使って無理やりPCでプレイしたりもしました。当時はスクラッチライブみたいなインターフェースとタンテなどのデバイスを繋ぐような仕組みはなかったから、PCとミキサーをサウンドカードで直接繋いで、PCはマウス操作って感じ。傍から見たらまったくDJには見えなかったでしょうし、あいつ何やってんの的な冷ややかな目だった。
 そんな工夫も色々して無駄な投資もいっぱいしてきたけど、今は必要な機材は現場にあるし、ツールはタダだし、音源もタダみたいなもんだし楽。Mixed In keyが高くてどうしようとか言うのはやめましょう。

 そんなこんなで、データのみならず音楽関連情報に関しても同様に、リアル店舗をハブとして情報や人が繋がっていくという従来の情報の流れはネットワーク上でのデジタルデータのやり取りという流れに置き換えられていきます。これは一般的な情報と同じですが、情報の入手先は最初はフォーラム的な掲示板からスタートして、ブログや専門サイトに移行し・・・というフォーマット変遷の紆余曲折を経てあらゆる情報はデジタルデータとしてネットワーク上でやり取りされるようになりました。

 この頃からDJ(というと語弊があるかな?セレクターならほぼこれが当てはまるでしょう)の音楽データの入手は次のフェーズに入り、最新音源がアップロードされたサイトのURLリンクをいかにして入手するかと同義になっていきます。P2Pでデータそのものをやり取りすることからクラウド上のデータへのアクセスリンクという「情報」を入手するという形へ変遷したということです。iTuneなどの正規音源のクラウドサービスがしっかり整備されるのはもっと後のことで、その期間が長かったためデータ=フリーという概念が定着してしまったのは世間一般の話としても同じでしょう。

 音楽にかかる諸々のデジタル化により、新譜レコードのリリースの絶対量は減りましたしレコード屋さんも減り、今では物理的なレコードで新譜を手に入れる人はマニアコレクターだけで、DJといえばアナログレコードではなくデジタルデータを扱う人になりました。近年レコードの需要が増えているとかアマダナガーとか盛り上がってきてますが、当時のように必要だしそれしか入手方法がないから買わざるを得ないという状況に戻らない限り、当時のようにレコードが売れることは無いように思います。

 このように、かなりの短期間の間に音楽=デジタルデータに変わったことで何が変わったかというと、プレイ時の持ち物がレコードからPCに変わりUSBに変わっただけ。最初に述べたように、DJと呼ばれる人達は2015年現在と30年前とやることもやっていることも何も変わっていません。

じゃあ変わってないし変わらない中で何を変えたらいいのかは次に。さすがに長いか・・・

No comments: