2015/10/01

②音楽を取り巻く物理的変化その1

音楽の入手経路やフォーマットの変遷についてはここ10年ぐらいの間にとんでもなく大きな変化がありました。しかし、それがDJ、クラブに変化をもたらしたとはいえないと思ってます。STEMでこれからもっともっと変わるんだとか言うかもしれないけどそうはならないでしょう。

自分の場合、2000年頭までは音楽はレコード屋さんの店頭で「レコード」というプラスチックの媒体に固定された状態の“モノ”を物理的に購入するという形式で音楽を入手してました。当時まだCDJは今のような使い勝手のいいものではなかったためCDは使い道がないからほとんど買わなかった。そもそもレコード買うだけでとんでもないお金がかかったから更にCDまで買うとか無理だけど。。。

また、情報に関しても、基本はレコード屋・クラブ・洋服屋などのリアル店舗での収集が主で、雑誌やメディアから得る情報を質・量共に遥かに上回っていた(DJというプレイヤーとして有用な情報という意味で)と記憶しています。

ところが、この頃から、ブロードバンド化などインターネット技術の発達に伴い、音楽がデジタルデータとして流通し始めます。データそのものを流通させるという方法が安価にできるようになるにつれ、音楽をテープ、CDなどの記録媒体に固定してその媒体を流通させるという仕組みを採る必要がなくなったのです。

まずは何らかの形で作り手の元からリークしたmp3形式の音楽データはP2Pという仕組みを利用して拡散されるという状況が増えていったと思います。若い子は知らないかもしれないけど、Winnyに代表されるような、簡単にいうと著作権法上は違法なデータ共有システム。お互いの持っているデータをWebを介してトレードできる仕組み。今でもたまにアニメをアップロードして捕まりましたとかニュースになるアレです。そのP2Pも最初はクローズドな世界で、玄人とかプレイヤーだけが互いの音源をトレードするために利用するプロ用のマーケットプレースみたいな感じでした。ほぼサウンドマンしかいないんじゃないかっていうようなP2Pアプリもあったり、ギークな感じがとても楽しかった。P2P上でやり取りされるデータの中でも持っているとすごいと思われるのがアカペラデータ。中には後述するダブのものもあって、サウンド名が消されていたりそのままだったり、こういうのは当然スタジオの人間がネットワークの流したものですが、レアなアカペラをゲットするにはトレードするレア音源を持ってないとダメだったりとカードゲームみたいな要素もありました。

しかし、こうした音源入手ルートを確立した人間の中には当然それで金儲けしようっていうバカもいっぱい出てきます。ソースが正規であれ非正規であれこれらの音源をコンパイルして逆にCDという媒体に固定し物理的にも流通させ始める者が現われます。カナダのAUDIOMAXXXのキングラージとか覚えてる?そういうのが特にダンスホールレゲエ業界では急速に広がりました。(他のジャンルはどうだったのかは知らないので誰か教えてください。)

つまり、当初は一部のプロに近い人達だけがプロモ的に取り扱っていた「音源データそのもの」がCDの形で違法に流通するようになったため、一般ユーザーもそれを容易に手に入れらるようになり、ソースがよく分らない音源が膨大な量流通するようになってしまいました。その頃から、正規版のレコードのリリース量は減る一方で、かけたい曲(特に最新の)を手に入れるには、そうしたプレリリースのデジタルデータを入手しなければならないという変な状態が当たり前になっていきます。元々、レゲエのレコードショップはプロショップ的な意味合いが強かったため、この、プレイヤー間でのP2P型音楽入手の広まりの先にある、データCD販売が店舗型音楽販売というモノが、既存のレコードショップというビジネスモデルに与えたインパクトは相当なものがあったと認識しています。ほんとはこの辺の事をもっと深く書きたいんだけど、それだけで何万字になってしまうのでその辺はボスウイングスのタケ辺りに書いてもらいましょう。

これが2000年初頭のお話です。

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