2015/09/28

①はじめに
今年はDJが主体の音楽フェスに幾つか足を運びましたが、これまでの「DJ」というものが日本でも大きく変わっていくんだろうなというのを実感しています。また、最近、友人が引越しをした際の「みんなレコードどうしてるの?」って話がフェイスブック上の30オーバーの元Bボーイ友達の間で話題になり、DJを取り巻く音楽技術革新とクラブシーン、DJの今後のについて思うところがあったのでまとめてみたいと思います。

まず、これを読む若いDJ達に一番伝えたいのは、「クソ重たいレコードを大量に運んで、鬼のように吸わされて、テキーラ飲まされたうえに朝方スピーカー運んでたようなハードコアな時代は大変だった!今はUSB一本だし酒も大して飲まないし楽でいいな!」というおっさんの回顧録ではないということ。全く間逆で、今そしてこれからDJをやるっていうのは想像を絶するようなセンス、スキル、努力が求められるとんでもない大変なことだということです。

 さて、世の中では、iTunes以降の音楽提供のスキームが市場を再定義した破壊的イノベーションだとかなんだとか、音楽の考え方や生活への関わり方を根底から変えたといわれてきました(とします)でも、この10年ぐらいで我々を取り巻く音楽環境は本質的な部分で劇的に変わったのでしょうか?
 イノベーションには、従来の製品やサービスなどの既存市場に改良を加え、より高品質・高性能なものを追加していく持続的イノベーションと、既存製品やサービスなどの既存市場の価値を破壊する可能性がある全く新しい価値を生み出す破壊的イノベーションがあるといわれます。それぞれのイノベーションに必要なのは、ユーザーが想定しうるニーズではなく、本来実現したい目的だが気がついていないことを発掘するということが一つ、次にその目的を満たすための解決策に新たな視点や創造性を持たせること、そしてその解決策に含まれる矛盾を克服することだそうです。(グーグルの検索結果先の文書より引用)

 クラブという場所における音楽にこれを当てはめた場合、ユーザーのニーズにおける、本来実現したい目的だが気がついていないことの発掘、その目的を満たすための解決策に新視点、創造性を持たせる、そしてその解決策に含まれる矛盾の克服とは何でしょう?ここがドラスティックに変わっていない限り、音楽業界にイノベーションが起こってクラブにも波及してくるということにはならないってことですよね?自分にはここは全く変わっていないように思えます。後述しますが、フェスという新しい形でのDJの関わり方が出てきたこれからは変わっていくと思いますけど。

 クラブDJをやっている人間の感覚としては、音楽の入手経路やデバイス、ライフスタイルへの音楽の刺さり方等々が変わったところで、今クラブという現場でやっていること、今後やることに何の変化もないと思ってます。DJは他人の著作物を途切れずに繋げて演奏することにより生み出されるグルーブ感でお客さんの高揚感を煽り、場合によっては踊らせ歌わせ、音楽自体の楽しさをお客さんに伝える。さらに、アルコールを摂取してコミュニケーションが円滑になっている非日常的な環境において、その音楽をハブとして人的交流を促進させることのお手伝いをする。という主たる目的には変わりはありませんし、その目的の対象となるお客様のニーズも大きくは変わっていくことはないと考えます。(何度もいうけどフェスはちょっと違う。)
 ここ数年、音楽のデジタル化がクラブシーンにおけるプレイヤーのあり方を変えたことの是非みたいな話をよく目にしますよね。誰でも簡単にDJを出来るようになったから質が下がったとかいうやつ。でも実際はそんなことは全くないし、音楽の形が変わったのは単なる物質的な変化で、上述の通りDJがやることは全く変わっていないと思います。
では、次回はその音楽の物質的変化について書いてみます。