2012/10/02

ダンスホール業界に必要なモノとは?④


前述の「5つの問い」の3つめに「コモディティ化にどう対応するか?」というものがありました。今回はこれをダンスホール業界に当てはめて考えます。

まず、コモディティ化って何? → Wikiリンク

概ねご理解いただけたかと思いますが、これは情報機器などだけの話ではなく、サービス業にも同じことがいえるのではないかと思っています。参考情報として、音楽のコモディティ化については一般的に以下のリンク先のように定義されることが多いようですが(必読)→ 音楽のコモディティ化
ここでは、音楽そのものの性質の変化云々よりクラブイベントやそれを取り巻く環境についてのコモディティ化について述べます。

近年騒がれている「ゲスト・ディスカウント問題」(○○のゲストの××だといくら!みたいなやつね)は正に一般的なコモディティ化でいうところの価格競争の最たる例ではないでしょうか?もはやクラブイベントにプロパー入場料という概念がなくなってきています。場所によれば1000円程度で飲み放題なんてところもありますが、居酒屋に行くよりクラブに行ったほうがよっぽど安上がりだという状況です。これはこれでクラブ側の業態変化ともいえますが、だとすれば、音楽というコンテンツが事業主体じゃないと示唆しているようなもんですよね?従来のやり方では難しいから別の形でお金にしようと考えるのはビジネス上当然の判断とはいえますが。。。

次に、コモディティ化には「品質の均一化」という要素が前提となりますが、近年のように、PCプレイがデフォルトになり、レコードプールやプレイヤー向けのDLサイト等から入手した曲を使うことが一般化し、容易にプロと同等の情報に触れることでできるような環境が整うと、最低限のスキルと情報収集力さえあれば概ね誰でもある程度形にはなるレベルのプレイができるような状況が生まれます。細かいテクニックまで理解できないお客さんの耳からすれば、「誰でもどこでもほとんど同じ」ということになります。もちろん、サービス品質(プレイ)はプレイヤーによって千差万別であり、プロのプレイを目の当たりにすれば違うことは明らかですが、ここでは便宜上、品質の均一化が進んでいると仮定します。
更に、オーバーシューティングの問題です。お客さんの要求レベルを超えた意味の無いサービス提供のことですが、要はいらねー機能が沢山付いた家電みたいな感じってことです。価格勝負も難しく品質も似たり寄ったり、となると差別化のためにはそれしかなくなるため、クラブ音楽でいえば、例えば過剰に海外の現地トレンドを持ち込んだりするのはこれに当たるのではないかと考えます。お客さんが求めるクラブで楽しむ音楽という要素において、それに纏わる薀蓄とかってプライオリティ低いと思うんですよね。
特に週末の大箱クラブにいるお客さんは「なんとなくクラブという空間で遊んでる感を味わいたい」ということが最大の目的って人はかなりの数を締めると思います。大きな声ではいえないけど、誰と誰のビーフとかどうでもいい奴プチョヘンザ!ってこと。もっといえば、ゴリガザ?ん?ってお客さんは当然いっぱいいるはずですよね。
自分のターゲットはそこではないと切り捨ててしまわずに、適切な形で伝えるのがプレイヤーの役割でしょう。オーバーシューティングなアプローチではなくね。

というような環境変化により、お客さんは、立地やクラブの知名度などから判断する“遊び易さ指標”と、“価格”という2つの判断要素を頼りにどこに遊びに行くかを判断するような傾向が強まっていきます。安く入れないとかオーバーシュートによる自らの要求レベルを上回るコンテンツ提供をするイベントは敬遠される訳です。これらが所謂一般論のコモディティ化と重ねて考えてもいいだろうという論拠です。

このようにコモディティ化が進んで、業界の過剰な価格競争の末、誰も現場でマネタイズできなくなり、最終的にはプレーヤーとしてのアイデンティティを保つためだけにイベントが開かれているという状況に陥ったら・・・怖いですねぇ。しかし冒頭の業界規模のシュリンクの話で触れたように、レゲエ・ダンスホールというジャンルに対する風当たりが強くなり、クラブ業界での発言力が弱くなり活動フィールドが狭まっていけば、プレーヤー・イベンターは、自分達の活動場所を求めて細かいコミュニティに分散せざるを得ません。今は過渡期のためそこまで顕著に現れてはいないと思われますが、今後はその傾向が強まってくるでしょう。なんせやる場所ないもんね?というか、やっても入らないからやれないやらせてくれない。。。
だから、少しでも条件の良い場所を探して活動フィールドをシュリンクさせていく。この結果、極論ですが最終的には自分達のプレイ欲を満たすためだけにイベントが開かれることになり、このイベント何のためにやってるんだというジレンマに陥る可能性は十二分にあると考えます。みんなでお金を払って遊んでるという最悪の状態です。コミュニティが分散してそれらから発信される情報が散逸してしまうと、お客さんはどこで何をやっているかよく分からなくなり必然的に離れていくし、たどり着いた現場がそんな感じだったら楽しめないでしょう。ここにも負の連鎖があります。

IBMの話に戻すと、ちょっと前までパソコン屋だったけど、事業の中核であるパソコンという商品がコモディティ化してシュリンクしていくことが分かったからさっと方向転換したんです。これってすごく難しいことですよね?しかも「分かったからやめる」というのがすごい。ダメな状態に陥ってから事業から撤退するんじゃなく、独自のオワコン予測に基づいてさっさと売り払った。こういう、すごいスピーディな判断を常時やっていかないことには長期的にビジネスをキープすることはできないんでしょう。
IBMがコモディティ化したPC事業を売ったようなスピーディーなジャッジが出来ない、シャープなどの日本企業が不振に喘いでいるのはご承知の通り。そうなっちゃうといくらリストラしようともコスト削減を図ろうともどうにもムリなことは証明されてますよね?つまり、業界のサイズを圧縮してプレイヤーを排除したり、音源を買わななかったりダブを取らないで(求めてないと客のせいにして)コスト圧縮して生きながらえようとしたところで沈む船は沈むってことは明らかにされてしまっています。

コモディティ化が進んだ業界にいる我々は、IBMの会長のいうように、それに対応していかなければなりません。とはいえ、ビジネスの中核でなくなったら撤退するという考え方をそのままスライドしてクラブシーンに当てはめると、単純に辞めちまうか違う音楽やるしかなくなるので、5つの問いを参考にするなら、必要なのはリインベンションの方ですかね。
iPhoneはリインベンション(再発明)だなんて言われますが、ダンスホール業界も、既存フォーマットにしがみつかずに、新しいカテゴリーの楽しみ方を生み出すとか、今まで提供していた機能(サービス)以外の新たな価値をお客さんに提供していかないといけないってことでしょうね。マーケティングの世界でも、顧客価値を汲み取った製品の共創なんていわれますが、そういう考え方が重要ですよね。我々プレイヤーのお客さんは実際に足を運んでくれる人もそうだし、その場を提供してくれるクラブもそう、そういう顧客の価値感を大事にしないと、当然オワコンになってしまう。
リバースイノベーションというのが流行っているようですが、これも顧客起点ですよね。プレーヤー側が伝えたいことを表現するというのはとても大事ですが、お客さんのニーズをベースに白紙から逆に提供する内容を考えてみる。こういう発想も大事かも知れません。
1つの例でいえば、アーリーはこうで次はこうで〆はこうだ。というあるべき姿や特有のマナーは大切ですが、それに固執しすぎることで顧客ニーズとかけ離れてしまっては問題です。

みんなで再発明や革新的なイノベーションを考えてコモディティヘルから脱出しましょう。逃げw

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