2012/10/11

ダンスホール業界に必要なモノとは?⑤


間が空いたら自分的にもどうでもよくなってきてしまいましたが、今回はパルミサーノ「5つの問い」の2つ目と絡めて。この5つの問いシリーズは今回で終わりかなーって感じ。

組織として相反する要素があったときどうすべき?
→「例えば、コスト削減とR&D投資、単にバランスを取るのではなく、M&Aも含めて大切なことはしっかりと継続すること」についてです。
これは、IBMがPC事業撤退してソリューション事業にシフトしないとだけどコスト削減は必須。そんな状況で効率的投資を行うためにコンサル会社だかなんだかをM&Aしてソリューション事業を加速させた。ということだと思いますが、これに当てはめた分析と課題解決について。

先日、自分が出演していたイベントで、ある出演者間で熾烈なバトルが繰り広げられました。主催者サイドの思惑通りのこの揉め事のおかげもありイベントはかなり盛り上がりましたが、ステージ上で文字通り揉めてる彼らのやり取りでとても興味深いものがありました。
というのは、一方が「お金は重要だ、トッププレーヤーが食えないのはナンセンス。だから自分は勝負するフィールドを変えたんだ」という趣旨の発言をしたのに対して、もう一方が「いやいや金より名誉だろ、本筋の世界で勝負しろ」という趣旨で反論をするというもの。
議論の構図は、こういう業界の永遠のテーマ?「商業的成功」VS「音楽的美学・リアリティ追及」でしょうか。商業的成功もリアリティの追及も、どっちも大切だし良い悪いじゃなく両方得るのがベストなのは当たり前。つまり、ビジネスにおけるコスト削減と新規事業への投資のように、大切なことは単にバランスをとるだけではなく、手法に工夫をしたうえで継続しないといけないってことと同じですよね?バトル中、マネタイズが重要と発言した方が「自分も世界の頂点を目指しているという点で目的は変わっていないが、その手法や活動フィールドを変えた。結果としてお金を得ることに成功したし、音楽的にも世界を相手に勝負できる土壌を作りつつある。」というようなことを言ってました。これは正に相反する要素でも手法に工夫をして効率的に成果を得るというパルミサーノ氏のいっているようなことじゃないかなと思ったわけです。
ただ、相当上手くやらないと正当な評価がなされないのがこういう業界なのでとても難しいのですが、この部分をどう上手くクリアしていくかが今のシーンにとって非常に重要だと思うのです。

上述のやり取りについてみんながどう思うのか気になったので、早速ネットでの論調を検索してみると、案の定「金より名誉だろ」というお客さんからの声が多く見受けられました。(完全な独自調べ)内容的には、意図的に売れる音楽をやるのはセルアウトだとリアルじゃねぇとかそういういいわゆるヤツね・・・
下手したらどんな音楽活動をしているかどんな音楽を作っているかなんて全く知らずに、イメージで何となくリアルじゃないし正しくない=いけてないと判断する。この、商業的成功を正当な評価に結び付けない風潮はいつに始まったのか分かりませんが、業界の足かせになっているのは間違いないんじゃないでしょうか。
ただ、最近は多少軟化したのかな?例えば、成功したアーティストが自分の球団持っちゃうのは純粋にかっこいいになってるんだろうし、ジバンシーとか着ちゃうのもアリになっちゃうぐらいなんで。なんせ子供の頃は宇田川町のレコード屋さんに入るには坊主じゃないとダメだと思ってましたから、それと比べたら変なかっこしても許される今は特に文化面はかなり自由かと・・・

このような、アーティストやプレイヤーに対してその業界にいる人(やる側もお客さんも含めて)が持っている「こうあるべき」というイメージには、商業的成功をリアルと相反するとして何となく嫌うという要素が含まれているような気がしますが、個人的には、これって、リアルとか本物とかいう概念は本当はどうでもいいんだけど、「アーティストはこうあるべき」という枠に当てはめてリアルかリアルじゃないかを判断するということ自体を価値感として共有できるか否かで、コミュニティにおける連帯感を確かめ合うという、日本人特有のムラ社会的感覚を表わしているのかなっていう気がします。
例えば、政治的な組織運営に際して仮想敵を作ってプロパガンダで価値観をコントロールしていく流れがあって、それに乗っかるみたいなのと一緒で、同調を通じて同じ世界にいる人との一体感を強めたり、仲間外れにされないようにするという一種の処世術的要素もあるんでしょうかね?日本人特有の感性なのか、クソ義務教育のせいなのかは分かりませんが・・・
その、仮想敵を設定するために作り上げられたような「リアル」って言葉に対するイメージが、業界特有の足かせとなって成長を妨げる要因になっていると思います。

さて、話を戻すと、これまで業界のシュリンク原因について、ジャンルとしてクラブ業界に敬遠なのか倦厭されているという趣旨のことを書きましたが、これには今回述べているような、相反すると思われる価値感への対応を並存どころかバランスすら取れていないということの影響が大きいように感じます。
クラブは良い音楽を伝えたいという信念に基づいて運営はされているのでしょうが、とはいえもちろん商売なので当然に数字は大切だしお客さんのニーズには敏感なはず。某クラブで「3時までは箱の色に合わせてお客さんの求めるものを提供して欲しい(何やって欲しいかは言わなくてもわかるよね?)。やりたいことは4時以降にお願いします。」といわれたことがあります。極端な例とはいえ、端的にあらわしている実際の話です。
プレイヤー側に業界特有のメンタリティとして商業的成功を嫌う性質が内在し、マネタイズより自らが考える音楽的な正しさ/リアリティの追求を強く意識して活動してバランスを欠いていたら、お店からすればボランティアじゃねーんだから趣味に付き合ってられねーんだよってなるのは当たり前のこと。
だからといって、やりたいことやるんだから時間貸しで完全にイベンターやプレーヤーのリスクでイベントをやれば済むと考えるのではなく、お客さんのニーズをしっかり汲み取って、クラブとの関係をしっかり考えてイベント運営を行うということが重要だと考えます。そうしないと、クラブ側やお客さん(特に本来は商売として囲いたい一見さん)から見た業界の地位向上が図れず、例のシュリンクに歯止めがかからないと思うんですよね。
お客さんのニーズの上に成り立っているクラブの利益構造と、やる側の音楽性追求という相反する要素を両立できないと、クラブやイベンターから、ここであなた達の音楽をプレイして欲しいから出演して欲しいといわれることも無いでしょうし。

お客さんやクラブが求めるものを提供するといい音楽ができないと思うのは大間違い。一晩何時間もあるんだし、手法に工夫してバランスよくやることはいくらでもできる。自分のブランディングだったら、SoundCloudだってなんだって発信方法はあるし、お金をかけてメディアを使わなくてもできることは沢山ある。(プロモーションやらにお金を使ったら使ったで文句をいう人が沢山いるのもまたおかしいけどね。)
今、マネタイズとプレイヤーとしてのポジションの確立に成功しているのはそれらをバランスよく出来ているトッププレイヤーの極一部だけなのは明白です。
商業的な成功や、お客さんのニーズに応じることを「ダサい、チャラい」と否定する空気とネガティブな発想、更には「こうあるべき」という変な先入観がシュリンクを拡大する原因の一つだと感じています。

サービス業がサービスしなくてどうすんの?

某大御所DJがサービスは重要だというようなコトを仰っていたと聞きましたが、正にそこなんでしょう。見直さないといけないところは。

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